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「ねぇ、せっちゃん」
「刹那だ」
「うん、わかったせっちゃん」
「……」
リジェネが直すつもりがないらしいと悟った刹那は無言で先を促した。
「そのアリーってひとさ、ところがぎっちょんとか言いだしたりしない?」
「するが…知り合いか?」
「……ヨハンさんじゃなかったのか?これ作ってたの…」
「トリニティ兄妹はあそこで修業しているだけだ」
「……うわぁ、会わなくてよかった…」
ライルが肺に残った息を全部吐き出す勢いでため息を吐く。それにニールが凄い勢いで頷いて、
リジェネが苦笑いをしていた。
「凄い嫌われようだな」
「嫌ってるって言うか、アリーはこの二人の親戚なんだよ」
「…あれも人魚だったのか…」
「ううん、二人の親、つまり陛下の義兄弟なんだ。なんていうの?血のつながりはない盃を交わすってやつの」
それは親戚とは言わないと刹那は思ったが、口に出すとややこしくなりそうなので言わなかった。
「小さいころよく父さんに連れられて居酒屋?連れてかれてセクハラされまくったんだよ」
「アリーはくすぐってるだけって言ってんだけど、なんか触り方やらしーし」
「酒が入るとあいつは誰でもお構いなしだ」
刹那がそういうと二人はふーんと言ってケーキに手を伸ばした。苦手な人間が作ったものでも食べるらしい。
そう考えていると、二人は食べ物に罪はないと言って冷たく冷えたシャルロットに身もだえている。
どうやら今回もお気に召したらしい。前回と違って、食べ方も丁寧になっていて、手づかみだからかと冷静に
分析した。
「なら、アリーもお前たちが人魚だと知っているのか」
「知ってる」
「…と思う」
「曖昧だな」
「14すぎたあたりから会ってないし、アリーも覚えてないと思う」
二つ目に手を伸ばした二人によく食べるなと思いつつ刹那はもう少しで空になるジュースをすすった。
「姫!契約書を持ってきた」
「グラハム…気が早いよ…」
「よう、ガキ感想聞かせろよ」
突如入ってきたグラハム達の大声にびっくりしたのか、刹那を除く三人はびくりと背筋を伸ばし、
ぎぎぎとまるで油をさしていない機械人形のような動きで入り口を見た。
「「アリーだ…」」
「あー?」
びくりと二人は身を寄せ合い、固まる。すると何か面白いものを見つけたとでも言うように、アリーが寄ってきた。
「なんだぁ?人魚は15年たっても外見変わんねぇのか?ちったぁ好みな感じに成長してると思ったんだがな」
「お…覚えて…」
「覚えてない方が良かったかぁ?」
「アリー」
「くくっ、手なんてださねぇよ、あいつに何言われるか」
咎める口調の刹那に、アリーは笑っただけで、二人に伸ばした手をひっこめた。
「どうだったよ、感想聞かせろや」
「…ぉぃしかった…」
「ぅん」
「そりゃ、何よりだな。それ聴きに来ただけだ、そんなに怯えなくても帰るさ」
アリーはホントにそれだけだったらしく、ひらひらと手をふってグラハムの隣をすり抜け下に降りて行った。
「ア、アリー!」
「また行くから!お店」
「おーおー、好きにしろー」
いい加減な返事が返ってきて、あとは階段を下りる音だけが響き、しばらくしてそれもなくなった。