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ここだと人が来ると言って、カタギリが非常階段の鍵を開けた。どうやら結局通報されたらしい。
管理人からカタギリに連絡があって、カタギリは予定を早めてマンションに来たのだった。
グラハムと刹那がそれぞれニールとライルを横抱きに抱えて、その後ろをティエリアとリジェネが大人しく付いてくる。
誰も廊下にいないのを確認してそっと階段をのぼり、温室の奥の水槽に二人をそっとおろす。
しばらくして、来た巡査とはカタギリが話をつけたらしく、早々に切り上げていった。
「説明してもらえるかな」
「我々は、この二人の教育係のようなものだ」
「…紅茶を知らなかったのは彼らのせいか?ライル」
「あー…っていうか海の中に存在しないし、紅茶」
それもそうかと刹那は納得したらしい。声が出るということに少し違和感を感じているのか、
ライルはぱちゃぱちゃと尾びれで水面をたたきながら刹那を見上げた。
いつもの癖なのか、水槽にはシーツが浮いていて、双子の下半身はほとんど見えない。
下半身を見なければほとんど人と変わりないのだ、見た目は。だからいつもシーツがあったのかと
グラハムは浮かぶシーツを眺めつつ呟いた。
「先ほども訪ねたのだが、家出とは本当か?」
「家出っていうか…駆け落ち?」
「駆け落ち…」
「陸の上でもそうだとは思わなかったんだよな…兄弟間での恋愛の禁止」
「だから足もらって逃げてきたってわけだ。伝説の人魚姫みたいにさ」
なーと声をダブらせる双子に教育係の約一名は頭痛がするのか、頭を抑え込む。
「どの道殿下たちは一生一緒にいなきゃなんないんだから逃げなくてもよかったのに」
「…でも、ウェーダに適性があるのは兄さんだけだった」
「ウェーダ?」
「あぁ、なんていうのかな、人魚って2パターンあるんだよ」
リジェネが、どこからか持ってきたクリップボードにはかわいらしい絵が書いてあった。下の方に
「くりす&ふぇると」と名がある。
「殿下達みたいに自然発生や番同士の交わりによって生まれる人魚とウェーダっていう
スパコンみたいなので作られた僕らみたいな人工的な人魚の二種類」
「ウェーダを操作できるのは王族でも限られてる、適性が見つかったのは兄さんだった」
「でも、あのあとウェーダがライルも大丈夫って言ってきてさ、ライルも適性あるみたいだよ?」
リジェネがニコニコしながら二人を見下ろしている、ティエリアと違ってリジェネはたまに何を考えているのか
わからないこともある。まぁ、あとで聞くとそういう時は何も考えていなのらしいのだが。
「兎に角、早急に国に戻ってください」
邪魔が入ってイライラしているのかティエリアはきつい口調で言う。
「陛下が崩御されたら国を継がなきゃならないんですよ、貴方達が!」
「う」
「そう…だけど…」
二人がしゅんと頭を垂れるなか、グラハムが突然挙手した。
「な、なんですか」
「私はグラハム・エーカーという。俗に言う音楽プロデューサーだ」
「…だからなんですか」
「私は、二人の声を気にいった、ぜひともCDデビューさせたいのだがいかがかな」
グラハムのKY発言に周囲は凍りついた。
きらきら輝くグラハムの瞳に若干おされぎみのティエリアはふいっとリジェネの方に
助けを求める視線をよこしたが、リジェネは完全に放心していた。
「歌…殿下の…」
「(駄目だ、リジェネは二人の歌が好きだった…)」
「俺からもいいか」
「まだ何か」
「ライルは俺の部下だ、勝手に連れ帰られては困る」
「刹那…」
刹那の言葉に感動したのかライルは小さく刹那を呼ぶ。一見すると二人の世界だが、
微妙なとこですれ違ってるなぁと完全に傍観者に徹していたカタギリは思った。