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パラレルしか書いてません。口調・呼称が怪しいのは書き手の理解力不足です。ディランディが右。お相手はいろいろ(の予定)
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もうもうと上がる砂煙。ライルは一瞬何が起こったのか分からなかった。
ただ、何処かで聞こえる人の叫び声と、誰かが痛みにうめく声。
眼の前にいたはずの刹那が見当たらないことにライルはハッとした。

『刹那…どこ、だ?』

足を一歩踏み出せはぴちゃりと言う音がして、思わず下を見る。

『赤い…これは、血?』

生き物の身体をめぐっているもの。流れ出てしまえば、死につながるもの。
ライルは視線だけでその出所を探す。まだ砂煙はおさまっていなくて、人々はパニックを起こしたままだ。

『刹那…!』

その血の持ち主が、刹那であることに気づいてライルはへたり込んだ。
酷い出血で、さらに刹那の上に何かが乗っている。
周りにもばらばらと落ちているそれは鉄骨で、他にも数人似たような状態になっている人間はいた。
ぴりっとした痛みを感じライルが腕を持ち当て見れば、ライル自身の左腕の肉もくっついてはいたが、酷くえぐれていた。

『いやだ、刹那』
「う…」
『死んじゃだめだ!』

ライルは刹那の近くに寄って鉄骨をずらして刹那を引きずり出す。
ライルのシャツを刹那の血が赤く染めていった。

『死んでほしくない…』

ライルは刹那をギュッと抱き寄せて眼をつぶった。
人魚姫が陸に上がって本当はどうなったか知っているのは、王族でも少数だった。
なぜなら、そうなったのは伝承にある「一人目の人魚姫」だけで、他に足を貰った者はそんなことにはならなかったからだ。
人魚姫は王子に食べられたのだ。人魚の肉は不老不死の妙薬で、人魚だとばれた彼女はその日の夕食になった。
その王子にとって人魚姫はそれだけの価値しかなかったのだが、人魚たちは彼女は丘で結ばれたのだと思いこんでいる。
食べられたのを知ったのはその姫の姉で、彼女はそのことを胸の内にしまいこんだ。以来それは彼女の家系にのみ伝えられる。
そのあと王子は死んだから、本当は不老不死の妙薬ではなかったのかもしれないが、それでも、人魚の肉は傷を癒すのだ。

『スメラギ!少しでいいんだ、俺を元に戻してくれ!』

ライルは叫んだ。それと同時に近くのマンホールのふたが突然飛んで、水があふれる。
周辺一帯はあっという間に水浸しになった。

「刹那、これ、食べて」

ライルは元々えぐれていた部分をかみちぎり、口で軽く咀嚼して刹那の口に押し当てた。
なかなか飲み込まない刹那に痺れを切らして、ライルは刹那に深く口づけて肉片を喉の奥に押しこむ。
ごくりと喉が動いて、刹那の口の中から、肉片がなくなったのを確認したライルはホッと息を吐いた。
幸い、マンホールから間欠泉のように噴き出す水しぶきが、ライルの姿を隠していて、人魚の姿は見られていないようだ。
(みられていたのならそれなりの騒ぎになっているだろうから)

「ライ…ル?」
「せつな、よかった」

うっすらと意識の戻った刹那を抱きしめたまま、ライルの視界はブラックアウトした。
遠くにサイレンの音を聞きながら。

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