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パラレルしか書いてません。口調・呼称が怪しいのは書き手の理解力不足です。ディランディが右。お相手はいろいろ(の予定)
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ニールはライルと一緒に最上階の水槽にいた。ライルは刹那が事故にあってからもう3日程会社を休んでいる。
普通はクビだが、ライルのいる会社は実はカタギリが支配人(兼支社長)を努めている会社で、
ライルの雇用に関してはすべてカタギリに一任されているから、カタギリに連絡さえすればどうにかなるらしい。
まぁ、それはカタギリがスメラギから二人のことを頼まれていて、なおかつそれが惚れた弱みの人物からの
頼みなのだからそうそう断れないのだろう。実際のところ、ライルの雇用は契約社員で正社員ではない。

「ライル」
『なに、兄さん』
「お見まいとか行かなくていいのか?」
『…大丈夫だよ、あ、俺ノド乾いたから飲み物取ってくるな』

ぱたぱたと走っていくライルの後ろ姿を見ながら、ニールはぶくぶくと顔の半分までを水につけた。
刹那が事故にあって以来ライルは少し大人しいというか、元気がない。
腕の傷はとっくに治ったから、もう包帯は巻いていなかったが、ニールが刹那の話をすると
とたんに痛そうな顔をする。でも、きっとそのことを聞く自分の顔もライルと同じような表情になっているんだろうな
と思いながら、水槽の縁に上半身を預けて、この間初めて聞いたラブソングを歌う。

「随分な歌唱力だな、ライル・ディランディ」
「なっ、誰だ」

歌い始めて数分後パンパンと手をたたく音が聞こえ、ニールははっと顔をあげた。
見上げると、金髪のいかにも王子様といった風情でグラハムが立っていた。
ニールも外見的特徴は知っていたが、なかなか名前と結び付かない。

「おや、私を覚えていないとは。ふむ、君はライルじゃないのかね?」
「…俺はニール、ライルの双子の兄貴だよ」
「先日から歌っていたのは君だったのか」

ニコニコと笑いながらグラハムは手を差し出す。うっかりつかんで引き上げられたらたまったものじゃないので、
ニールはその手は取らずに笑い掛けるだけにとどめた。

「あぁ、そうだよ」
「いや、実に素晴らしかった。どうだい、今度食事でもしようじゃないか」
「遠慮しとくよ、知り合いに、出会ったその日のうちに次の約束を取り付ける奴にはついて行くなって言われてんだ」
「それは残念だ。私は君に心奪われたというのに」

こっぱずかしいセリフを臆面もなく、つらつらと述べる隣人にニールの笑みも思わずひきつる。
ライルはこんなのを相手にしているのかと。個人的にはまだ、もう一人の隣人の方が付き合いやすそうだ。

『兄さん!』
「ライル」

グラハムがいるのを見てライルの顔は真っ青になっていた。
そのまま水槽の方に走ってきて、ニールめがけて飛び込む。ばしゃんと大きな水しぶきが上がった。
あふれた水がグラハムの白いスラックスの裾を濡らす。

「どうした」
『兄さんは俺の』
「はいはい」

ぎゅうぎゅうと抱きついてくるとことを見ていると、嫉妬半分ばれたのではという焦りが半分で、
それでもぷぅと頬を膨らます弟は可愛かったらしい、ニールはライルを抱きしめかえす。

「ライル可愛いー、お兄ちゃんはライル大好きだぞー」
『俺も、兄さんのこと愛してるよ』

二人はきゃっきゃしながら軽いキスを繰り返した。グラハムがいるにもかかわらず、
いちゃいちゃしだしたディランディ兄弟にグラハム自身は少し面白くなかったらしい。
突然スーツの上着を脱いで、勢いよく水槽に飛び込んできた。

「うわ、何もあんたまで入ってくるこたねぇだろ」
「私は我慢弱い男だ。君たちのそのような姿を見せつけられて我慢できようか、いやできまい」
「自己完結すんな」
「私はグラハム・エーカー!見ての通りの男色家だ!」

どこをどう見て男色家だと判断しろととニールは思わず心の中で突っ込み、なんだかこっちに近寄ってくる
グラハムから遠ざかるようにひれをそっと動かした。
それ着気付いたライルが体に巻いていたシーツでニールを包むと、仕方なくグラハムの方に泳いでいく。

『グラハムさん』
「さんづけはいらないと言っている」

ライルの言葉は聞こえていないはずなのにグラハムは返事を返した。
ニールは疑問に思ってそれを口に出す。

「あんた、ライルの言ってることわかるのか?」
「勿論だ、私は音楽業界に長いこといる。口の動きでわかるとも」
「そうか…」

納得はいったので、とりあえずシーツにくるまったまま、ライルの後ろまで泳いで行った。
要は下半身が見えなければいいのだ。だから、ライルがいつも持ち込むこのシーツはとても役に立った。

『俺たちがキスしてたのが羨ましかったのか?』
「まぁ、そういったところだ」
『そう、…兄さんしてもいいかな?』

ライルは後ろを振り向きつつ言った。ニールは仕方ないといったようにライルの頭をなでる。

「刹那にはよくて、グラハムには駄目っていうのは…な」

苦笑いしながら、ニールはグラハムとライルを水槽の縁にまで押しやって、ついっと、グラハムの顎を
引き寄せた。

「ほれ、俺からもサービスだ」

軽いリップ音とともにグラハムとニールの唇が重なる。

「は、破廉恥だぞ、姫!」
「破廉恥だぁ?あんたのカミングアウトの方がよっぽど破廉恥だと俺は思うがね」
『っていうか、兄さん姫って呼ばれてるけどいいの…』

体勢上グラハムと限りなくくっついているライルは呆れつつ、ちゃんとグラハムの首の後ろに
腕をまわして、口づけた。ライルはニール同様軽くのつもりだったのだが、グラハムがしつこく
離さなかったため、ライルの息は上がっている。

「だ、大丈夫か?」
『平気、兄さんもっかいしよ』
「うぇ、あ、わかった」

また、乳繰り合い出した兄弟に、グラハムは今度こそ諦めたのか、水槽から上がる。
上質の白のスラックスは見事クリーニング行きとなっていた。

「姫君たち、邪魔をしたな」
「あ、いや」

結局姫を訂正できないままディランディ兄弟はグラハムと別れ、グラハムは扉の前に凄い形相をして立っていたカタギリにこってりと絞られた。

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