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パラレルしか書いてません。口調・呼称が怪しいのは書き手の理解力不足です。ディランディが右。お相手はいろいろ(の予定)
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小春日和の今日は外回りに行くには絶好の天気だった。
正直にいえば、外回りに行くよりも、ピクニックでもした方がよっぽどいいようなそんな天気だ。
まぁ、そうも言っていられないのが社会人というものだが、とそこまで考え刹那は足をとめた。
いつの間にか後ろにいるはずのライルの気配がない。振り返れば、数メートル離れた場所で
物珍しそうにタンポポの花を見ていた。

「それも知らないのか?」
『タンポポだろ?カタギリがダンデライオンのハーブティーくれたから知ってる』
「……」

彼の言い分ではカタギリがそのハーブティーをくれるまでは知らなかったということになるが、
もういちいち気にしていられないほどライルは知らないことの方が多かった。
海産物に関してはありえないぐらい詳しいのだが、それ以外に関してはさっぱりだったりもする。
しかも、知っているものと知っていないものの分類もよくわからない。テーブルは知っているのに
椅子は知らないだとか、まるで部分的に記憶喪失になっているように刹那には思えた。

「なら今日の昼はオーガニックレストランにでも行くか」
『有機野菜のレストランだよな?』
「あぁ、今ならランチ料金だろうからな」

本来ならそういった類の店はグラハムの方が詳しいのだが、(彼は接待だの打ち合わせだので
そういったところを利用することが多いようだったので)高校生時代に同じクラスだった社長令嬢の
親が経営しているレストランの一店舗にそういった店があるのを思い出したのだった。
本来なら要予約だろうが、いつでも来いと言っていたので余り気にしないことにした。
ライルは相変わらず魚介類は口にしないし、肉もあんまり好んでいないようだが、最近は海藻のほかに
野菜をよく食べているので、(普通に考えれば実に不健康なのだが)そのレストランならば気に入るだろう
と思ったのだった。半分は先日の詫びも入っているのだが。

「確か、野菜のデザートがあるらしい」
『野菜でスウィーツなんて作れるのか?』
「作れる」

首をかしげる29歳に周りの人間は一瞬我を忘れたように見入ってしまい、刹那にいたっては
今ここでキスしたい衝動にかられながらも、なんとか我慢してライルの手を引いた。
ライルはすっかりこの辺のオフィス街のアイドル状態だった。

『(刹那、俺に合わせようとしてくれてる…)』

ライルは刹那の背中を見詰めつつ歩く。自分より年下の先輩。信頼できる人。
彼やカタギリ、グラハムがいなければ、自分はこの街にはなじめなかったとライルは
緩くつながれた手を強く握り返した。

『(刹那は…ほんとは、魚好きって言ってた…)』

会社の同僚は刹那は魚の入った少し変わったシチューが好きなのだと言っていた。
(実際それは中東の料理なのだが、その同僚はそこまで詳しくなかった)
でも、ライルはどうしても魚を食べモノだと認識できない。だから食生活は自然と偏る。
陸にしかないものは食べられるがそれでも肉はあまり得意じゃなかった。

『俺は刹那に無理させてるのかな…』

前を向いたままの刹那はライルの口がそう動くのに気付かない。
強い風が吹いた。誰かが危ないと叫ぶ。ライルはその声につい立ち止まって、声の主を見た。
立ち止まるライルに合わせて刹那も立ち止まる。それはライルの目にはまるで
スローモーションのようにうつった。

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